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理想の“ホーム”って何だろう? LGBT福祉業界交流会レポート

皆さんこんにちは。
グッド・エイジング・エールズ、
ホームチームのホイちゃんです。

ブログ第2弾は、前回告知したイベント
「福祉業界人集まれ! ~理想とするホームをつくろう~」のレポートと、
僕自身が感じたこと、を書きたいと思います。

12/7(日)の午後、雲一つない日本晴れの中、
神宮前カラフルステーションの「FLAT」に、
総勢11名の福祉業界で働くLGBT当事者やアライの皆さんが集結しました。

特養で働いている介護福祉士(ヘルパー)、
居宅介護支援事業所を展開しているケアマネジャーや、
看護師といった専門職の方から、
はたまたLGBT向けのサービス付き高齢者向け住宅や
コレクティブハウスの建設を進めている方々まで、まさに多種多様。

特養勤務経験者が3人集まれば、当然盛り上がるのが「施設介護あるある」。
その話が傍で聞いていてもとっても面白いので、
それに加われない地域包括ケアコンサルタント・ホイちゃんは、
現場経験がないことを恥じ入るのでした・・・。

それはさておき、、

イベントでは、まずいきなりグループワークに入るのではなく、
皆さんが普段思い描いている(そしてイベントに参加するモチベーションにもなった)、
「LGBTと老後・介護・医療・住まい・・・」といった問題に関する
“アイデア”を、徹底的にポストイットに書き出してもらいました。

理想の“ホーム”を巡るグループワークに入る前に、
皆さんがそれぞれどんな問題意識を持っているのか、知りたかったからです。

ブレストで出たアイデアを集約すると、こんな感じでしょうか。

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・独居問題(一人暮らし老人の連携はどうすれば作れる?独居の人のフォロー体制・・・)
・同性パートナーと共に老いていくには?(同性カップルが入居・入所できる施設?)
・セクシュアルマイノリティ介護の考え方
(例えばトランスジェンダーの人の身体介助のスタイルをどう確立するか?
 セクシュアルマイノリティによるセクシュアルマイノリティ向け介護等)
・ハードorソフト問題
(そもそもハコ物を作ってみんなで入るほうがいいのか、
 地域で隣近所で支え合う仕組みの方がいいのか?等)
・事業化へ向けた現実問題
(ニーズが顕在化するのは何年後か?資金的な問題をどう解決するか?)
・「セクシュアルマイノリティ向け」と銘打った環境に、
 自分が入りたいか問題(「ザ・福祉」とならない方がいい??等)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんな感じの問題群に分けられるのかな、と思います。

理想の“ホーム”といっても、
それは何らかの理想的な「ハコ物」の建設なのか、
それとも既存のサービスや事業者をセクマイ向けに啓発・発展させる現場の
「リテラシーUP」なのか、
当事者一人ひとりを支える「ネットワーク」の構築なのか・・・
様々な論点や方向性が見えてきました。
(これらのポストイットはKJ法的に模造紙で再構成し、
 イベント後半で参加者と再度シェアしました。)

ブレスト後は、2班に分かれてグループワークです。
各参加者が相互に影響しあうことで、
どんな“ホーム像”が立ち現われるのでしょうか。

そこは、さすがは現場を知っているプロの方々だけあって、
極めて具体的な議論が展開されました。


例えば実際にケアマネージャーをされている方から、
「当事者であろう利用者、入所者は既に何人か見てきた。
施設に同性パートナーが見舞いに来たりして、
周囲のスタッフも大体状況は分かっている」
というお話がありました。

すでに現場では、当事者である高齢者が可視化され始めているんですね。
彼が見てきたその数名に関してだけ言えば、
特段問題にはなっていなかったとのことでしたが、


一方で
「可視化されていない方々の中で(特に在宅サービスの場面で)、
 おそらく(セクシュアルマイノリティであることを
 カミングアウトできないことがネックとなって)
 サービスの利用抑制は起こっているであろう」
という重要な視点も出されました。
 
「その人に本当に必要なサポートは何なのか」というアセスメントを、
正確かつ客観的に判断しなければならない、
介護保険認定調査員や、現場ケアマネジャーレベルで、
地域の高齢者の中にLGBTがいるかもしれない、という基本的なリテラシー
(この視点がなければ、適切な質問も、適切な接遇も、適切な評価もできません)
を持つようにならなければ、これからどんどん社会保障サービスの網の目から
零れ落ちてしまう当事者の高齢者が出てくる可能性がある・・・

問題はやはり迫ってきているのです。

具体的な施策としては、2つの方向性が出されました。
 
一つは、トップダウンで変えていく方向性です。
さすがは現場の方々、グループワークでは、
「ヘルパーやケアマネージャーの資格講習で、
(教科書に書かなくても)キチンとLGBTの存在をアナウンスしていく方法」や、
施設スタッフ、地域の職能団体への研修パッケージの展開といったやり方です。
これなら大きなスケールで既存のサービスの質向上、リテラシーUPを期待できます。


ただ、これってすごく大変なことだよね、という話になるわけです。


また、グループワークでは、他にももっと身近に当事者である
我々現場スタッフが取り組んでいくこと、という視点でも多くのアイデアが出ました。

実際に、勤めている施設でカミングアウトすることで、
その施設全体が一気にLGBTフレンドリーになった、
という事例を話してくれた方がいました。

他の方も
「施設全体を研修という形で制度的に変えていくことは大変だが、
カミングアウトすることでユニットレベルでのケアを
フレンドリーに変えていくことは柔軟に出来る。
ミクロから頑張るしかない」
といった意見も飛び交いました。

施設は、制度的に「地域交流」という形で、
地域の福祉フェスに出展する等かかわりを持ちます。
こういった地域フェスに、LGBTコンセプトで出展してみる、
なんて取り組みも素敵な案だと思いました。

逆に、社会の側から、
例えば大学のLGBTサークルが地域の老人ホームに訪問して、
LGBT啓発も兼ねたリクリエーションに行く、
そして施設とサークルをマッチングさせるサービスを別途我々で作る、
なんていう案まで出ました。

(そういえば映画「メゾン・ド・ヒミコ」で、ゲイサークルの若い子達が、
流しそうめん企画でホームに遊びに来る、というシーンがありましたね・・・
入居者と学生が全裸で波打ち際まで走るシーン、
あの大学生のおしりはゲイ映画史に残る名場面ですよね・・・←ってオイ!)
 
ともあれ、トップダウンの視点と、現場当事者によるボトムアップの視点、
両面での取り組みを順次進めていくことでしか、
現実的な解はないんだろうな、と改めてみんなで確認しました。

 
グループワークでは、現実的な問題は横に置いておいて、
とにかく自分が将来住んでみたい理想的な“ホーム”について、
実現可能性は無視して楽しく議論してみよーよ、という時間も設けました。

その中でのアイデアを書き出すと、、
 
・ 農地付き、清流付き(笑)のホームで、ロハスライフ
・ 同性パートナーと相部屋で一緒に最期まで暮らす
・ 介護する側もされる側もLGBTで、世代間交流を
・ LGBT向けによく練られた(笑)イベントやリクリエーションが豊富
・ ファッションショー等、入居者がいつまでも存分に「感情表現」できる場所
・ 空き部屋を活用して、(ノンケ?w)学生さん達と一緒に住む・・・

などなど、様々なアイデアが、出るわ出るわ(笑)。
LGBTの老後は暗いといわれがちですが、実現可能かは置いておいて、
ポジティブに語ろうと思えばとっても楽しいものなんですね。

そんなこんなで、前半は厳しい現実と向き合ってしかめ面だったグループワークも、
最後は理想をたくさん語り合いながら、楽しい未来をみんなで共有して終わりました。

===

ホイちゃんはグループワークを終え、どんな感想を持ったんでしょう。

まず新鮮だったのは、僕は仕事がら「施設から在宅へ」といった話に触れる機会が多く、
これからのLGBTおひとり様も、施設の画一的な環境を志向するより、
それぞれが在宅で暮らしながら、地域で緩やかにつながっていく、
そういう環境を志向するものと思っていたのですが、そうでもなさそう、という点です。

ある参加者が言うには、
「緩やかにつながった(アライ含めフレンドリーな)人同士がふらっと立ち寄れて
 時間を過ごせる、カフェ的な空間が好き。
 老後もこういう場所にアクセスできることが重要。
 自宅が仮にこういう場所から遠かったら、とても辛い。
 であれば、カフェ的な空間が併設された施設やシェアハウスに移りたい」

この視点がすごく新鮮でした。
「自宅か施設か」という選択に、
「カフェ的な場所へのアクセス可能性」が重要な意味を持つ。
なるほどな、と思いました。

家族、特に子供がいないことがほとんどないLGBTの老後にとって、
“コミュニティ”はとても大事だなとは思っていましたが、
終の棲家の選択にとって、この“コミュニティへのアクセス可能性”
(別の言い方をすれば、コミュニティとの“いい距離感”ともいえると思います)
という視点は、とても重要なんだろうと思います。
 
また、既存事業者・サービス提供者へのリテラシー向上施策に関しては、
やはり「キーパーソンは誰か問題」に終始する、
という気付きにも、つながりました。

LGBTというセクシュアリティにばかり注目してはいけないと思います。
これからは、「世はまさに、大ノンケおひとりさま時代!(ワンピース風に)」であり、
結局「この高齢者のキーパーソンが誰なのか」
というケアのマネジメントにおいて重要な問いが、
これまでのように“自明ではなくなった”、
という問題にこそ注目すべきではないでしょうか。

セクシュアリティは、この非自明になった問いの答えを探る
一つのカギに過ぎないのではないか(まぁ重要なカギなんですけどね)、と。

リテラシー向上をノンケ社会に訴えるにあたって、
セクシュアリティに特化するのではなく、
この「キーパーソン誰だ問題」を軸に攻めていく方が戦略的なのかな、、
と思う次第です。この気付きも、今回のイベントの収穫でした。

・・・そろそろグッド事務局から「ホイちゃん話長過ぎ!」というクレームが入りそうですね。
ここらへんの論点については、またおいおいブログで書き溜めていこうと思います。

とりあえず、今月のイベント
「福祉業界人集まれ! ~理想とするホームをつくろう~」に関して、レポートでした!
引き続きブログ連載に乞うご期待です!!